ツワブキ(石蕗) キク科ツワブキ属 多年草

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 ツワブキはフキに似ていて、しかも葉に光沢があるので艶ブキ、それが転訛してツワブキになったと言われる。たしかに葉の形や、山菜の代表ともいえる茎のホロ苦さなどは似ているが、さらによく見ると類似点よりはむしろ相違点の方が目立つようだ。
 その第一は花だ。フキノトウと呼ばれるフキの花茎は分厚く覆う苞の中からちょっぴり顔を見せ、晩冬、雪の中からこんもり顔を擡げ、愛らしく人気ものだが、薹がたってしまうと白茶けた花は見向きもされない。ツワブキの花は葉に遅れて初冬、花茎の先に真黄色の大柄な花を開く。殆どの野草が姿を消した冬枯れの山麓や沢筋にこの花が群れていると、凩の吹だまりに一団の暖かい気流が漂っているようだ。
 第二にフキの花茎は、まるで葉茎とは無縁のように、僅かに離れたところから、地下で繫がっていることなど知らん顔して地上に出現するが、ツワブキの花茎は葉の重なりの間を縫って嫡子を誇るように大らかに直上している。

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 第三に、フキの葉は薄く柔らかく縮面のようにしなやかで光を吸い込むが、ツワブキの葉は分厚くごわごわしていて艶があり光を照り返す。またツワブキの若葉は薄茶色の長めの産毛に密に蔽われており、私は地上に僅かに姿を現したこの若芽に初めてお目にかかった時、大きな毛虫がモゾモゾ蠢いているように錯覚し、ギョッとしたものだ。
 第四に、そのホロ苦い味覚では似ている葉茎も、フキは半透明の緑白色で明るいが、ツワブキは鈍重な赤褐色で固い。
 こうしてみると、この両者は相違しているというよりはむしろ対照的で、総じてフキは柔和でありツワブキは剛直である。ひょっとしたらツワブキの〝ツワ〟は〝艶〟ではなく強者の〝強〟なのかも知れない。ツワブキはどこの裏山にもあり、自生している生態に接する度合いはフキより遙かに多いだろう。
 阿東町の北隣石見の国、吉見氏の城下町、津和野はツワブキの群れる野ということでその名がついたといわれているがその正否は知らない。しかし、冬季、山口線に乗ると、津和野に限らず山口市を過ぎたあたりからいくつかのトンネルをくぐり日原に至るまで、その沿線にツワブキの絶えることがない。

 「寂しさの目のゆく方や石蕗の花」 蕪村

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